高井鴻山記念館から、竹風堂の小布施本店で昼食(栗ごはん)を済ませた後、その中庭(というか裏手)にある、日本のあかり博物館(入館料大人500円、大学・高校生400円、小・中学生無料、団体割引あり)に行きました。
1980年に北信濃とその周辺で使われていた灯火具が重要有形民俗文化財に指定されたことから、日本初の灯火具専門の博物館として1982年に開館したのが始まり。その数963点。これらが常設展示されています。しかも小布施は、江戸から明治期にかけて、灯火の燃料として当時は欠かせなかった菜種油の生産が盛んで、遠く高崎や江戸にも出荷していたのだそう。東京が地方頼みなのは、今も昔も変わらんですな。
入口で入館料を納め、ミュージアムショップを通りながら館内へ。実際に点灯している「ねずみ短けい」という、かわいいモチーフの灯台からスタート。これが実際に点いているのを観られただけで、相当貴重だと思います。
燭台からロウソク、無尽灯、提灯、近代のランプまで、人々の暮らしを照らしてきた灯りの数々。一見すると古めかしい灯りのなかでも、今に生きているものもあるんですよね。ロウソクは仏前のイメージがありますが、キャンドルなんて呼び名を変えてカフェやBARでも演出の小道具として使われています。
「露地行灯」も東京・神楽坂や谷根千、湯島あたりの路地裏では普通に見られます。これが地面に灯っている裏通りは、雰囲気が良いんですよね。
最も面白かったのが「光源による明るさの比較」という、展示のラスト。パーテーションで区切られた一角にある展示室右側のボタンを押すと、「行灯」→「ぼんぼり燭台(ろうそく)」→「台ランプ」→「白熱電球」の順(使用年代順)に明るさの比較実験が自動で始まります。
驚いたのは行灯の暗さ。よくこんな心許ない灯火で、本を読んだり勉学に励めたりできたもんだなぁと。お殿様が書見台で文献を読む時代劇の場面を思い出したのですが、あれはありえない明るさなのだと再認識させられました(当たり前ですが)。
展示によると、行灯を1とした場合の明るさは、ぼんぼり燭台(ろうそく)は2倍、台ランプ(石油)は5倍、白熱電球(60ワット)は80倍なのだとか。電球の時代になって、照明がいかに進化したかが分かりますね。
それにしても。こと街の明るさについて、日本はアジア文化寄りと聞いたことがあります。欧州の夜は暗いと言いますよね。ドナルド・キーン先生は東日本大震災後の日本、特に東京が、煌々としたネオンなど夜の明るさに戻ったことを嘆いていらっしゃいました。
技術革新前の時代を想像せよとは言いませんが。展示を見ながら、もう少しだけ、自分も含め日本人は燃料やエネルギーについて思いを巡らたほうがいいのでは、と思った次第で。照明、控えめで全然いいよね。