米ニューヨーク初のノンアルコールBAR「Getaway」が流行ったり、あえて飲まない選択をする人を指す「Sober Curious(ソバーキュリアス)」がニュースになったりするなど、ドリンカーを取り巻く環境もどんどん変化し、また洗練されてきました。
ノンアルコールのカクテルなんて、物足りないって? いやいや、昨今のモクテル=ノンアルコールカクテルを、みくびっちゃいけませんぜ。カクテルや種類問わずお酒への愛があり、お酒を知り尽くしたバーテンダーが作れば、そのレシピと演出次第で、下戸はもちろん飲ん兵衛も楽しめるのです。
で、そんな凝りまくったモクテルを楽しめる店がこちら。おそらく日本初であろうノンアルコール&ローアルコール専門BARがオープンしたとのことで、さっそく伺ってきました。
その名も、Low-Non-Bar。2020年3月12日にオープンしたばかり。東京駅八重洲口から八重洲北口通りを入って徒歩3分弱。周囲は居酒屋さんやカラオケ店がひしめく中で、異彩を放つおしゃれなBARです。カウンターは10席、背後に4人がけテーブル席が3つほど。この日はオーナーの宮澤英治さんがいらっしゃり、宮澤さん自ら腕を振るってくれました。
スタートは、店の名を冠したタイトルロール的カクテル「Low-Non-Bar」。ミックスベリーや赤パプリカを効かせたアルコール0%のカクテルです。この鳥を模した器が、また凝ってる。SNS”映え”するカクテルでもあります。
宮澤さんと相談して、2杯目はノンアルからローアルに。ウッドフォードリザーブをベースにした「ローボール」という名のカクテル。ハイボールならぬローボールってのが、またしゃれてる。酢のような酸味とほどよい甘み。シュワシュワは抑えめで、炭酸が苦手でもこれならOKって人、いるんじゃないかな。
この日くらいは、ノンアルを貫くぞと思ったのですが……。メニューにばっちりレシピが記されているのですが、迷いまくり。3杯目、何を飲めばいいですかと尋ねたら、差し出されたのは珍しいカリラ7年。ぼくの潜在的な欲求をお見通しのようで、結局ウイスキーという、いつものオチ。
メニューに載ったカクテルは、いずれも税抜1,400円(別途1人につき800円のチャージ、チャーム付)。もちろん、クラシックのカクテルも作ってくれますので、ガツンとくる酒が飲みたいという向きも楽しめます。
それにしても。脳って、アルコールなしでも騙せますね、間違いなく。「雰囲気で酔える」というのは、本当だと思います。単に飲み物を楽しむ次元を越えて、会話を彩る場のしつらい、照明や音楽、使われている器やバーツールetc……。これらの調和によって、アルコール抜きでも中枢神経に響いてきます。
ここLow-Non-Barはしたがって、単に酔っぱらいたいだけの人、コスパだけを追求する人には不向き。反対に、確かなドリンクを会話や雰囲気とともに、しっかり楽しみたい人には、最高の居心地となるでしょう。
そしてそれが、下戸にも左党にも公平であるという点が素晴らしいのです。徐々にではありますが、それがBARクラスタで始まっていることが、われわれのような呑助にとってもうれしいのです。