ハイランドモルトウイスキーを楽しむ(第2回)勉強会。

好きなウイスキーを問われれば、個人的にはハイランドと、そこに内包する地域スペイサイドのシングルモルトが多いです。
ハイランド系のモルトをいくつかいただく講座に参加し、改めて認識させられました。

テイスティングメモを残しておきます。

タリバーディン5年 OB late1970s for ITALY(Tullibardine) 40%

  • 香り…ナイーブ。麦を入口にレモングラス、干草など。
  • 味…レモンの砂糖漬けや麦芽をかじったような優しい甘み。後味もあっさり。
  • 総評…レモンやグレープフルーツを砂糖に漬けたような優しい甘さ。始終サラッとしている。

ブレンデッドのハイランドクイーンの原酒です。
蒸留所のある南ハイランドのブラックフォードは、スコッチの割り水として知られるミネラルウォーター「ハイランドスプリング」の取水地。
それが影響しているのか、ソフトで疲れさせず、昼飲みの供にイイ感じです。
いくつかの所有者の変遷を経て、2011年にフランスのワイン商・ピカール社が買収。
ワイン樽のモルトをリリースしているのが分かりやすいですね。

タリバーディン5年

グレンゴイン17年 OB around 1990s(Glengoyne) 43%

  • 香り…強め。シェリー、後半からシュークリーム、キャラメル。
  • 味…ミディアム寄りのライトボディ。ナッツ、めっちゃ熟したレーズン、クランベリーなど。
  • 総評…ぶどうパンと一緒に楽しみたい気分。特徴的な香味なのにスルスルと入ってしまう軽やかさ。

蒸留所はハイランドとローランドの境目で、取水地(ゴインの小川)が北側にあるそうで、区分がハイランドとなっています。
このグレンゴインはちょっと前の流通品で、原料の大麦にイングランド産のゴールデンプロミス種を使用したもの。
同種は1960年代に登場し、その後の品種改良の礎となったの大麦。
グレンゴインは一時期この品種のみを使って製造していた時期があったそうです(現在はスコットランド産のオプティック種)。

グレンゴイン17年

トマーテイン12年 OB(Tomatin) 43%

  • 香り…温泉卵、アプリコットデニッシュ、プリンのカラメルソース。
  • 味…めっちゃ軽い。が、味わいはしっかり。トライフルロール。
  • 総評…マイルドな飲み口が長続き。柑橘のようでもあり、スイーツのようでもあり。

現行の12年物で、バーボン樽とリフィルホグスヘッドとシェリー樽の原酒を混合後に、別のシェリー樽で後熟を施しています。
さほどシェリー樽は効いていないように見受けられました。

「ネズの木の茂る丘」という、すてきな名前の蒸留所です。
そんな詩的なイメージとは反対に、かつてはビッグTなどの自社ブレンデッドや他社への原酒供給を行っていたという熱量高め(?)な造り手です。
現在は宝酒造と丸紅、国分が共同オーナーを務める日本所有の蒸留所です(買収時は宝酒造と大倉商事)。
2016年のリブランド後、焼酎カスクの「ク・ボカン」などを手掛け、2017年にはウイスキーマガジンの世界的コンテスト「アイコンズ・オブ・ザ・ウイスキー」で、「ブランド・イノベーター・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。

トマーティン12年

グレングラッサ27年 1976(Glenglassaugh) 47.4%

  • 香り…洋梨のコンポート、フランベしたバナナ、バニラクリーム。
  • 味…卵だけの純粋なプディング、カカオたっぷりチョコレートやクッキー。
  • 総評…なんというゴージャスなデザート! スイーツと組み合わせたい。

アルコール度数の数値だけ追っていては分かりませんが、これはカスクストレングスでしょうか?
長年の熟成を経て、度数が下がってきたのかも。

ブレンデッドのフェイマスグラウスやカティサークの原酒。
蒸留所は1986年の操業停止から23年の休眠(メンテはしていたようですが)を経て、2008年にスカントグループが買収して奇跡的に復活を遂げました。
現在ブラウンフォーマン社がベンリアック、グレンドロナックといったスコッチの蒸留所とともに所有しています。

グレングラッサ27年

オールドプルトニー12年 2005-2017(Old Pulteney Distillery Limited) 61%

  • 香り…鼻腔を刺激する強さ。ちょっした硫黄っぽさとともに、バニラやレモンチーズケーキ。
  • 味…ツンとするも爽やか。ハチミツ、バニラウエハース。
  • 総評…明るさしか感じない。陽光のビーチで飲みたいモルト。

シングルモルトというとシェリー樽系の例を引くまでもなく、内省的で黙りこくってしまう魅力があるのですけれども。
たまに複雑でいて陽気なキャラクターが飛び回る、やんちゃ坊主がいるんですよね。
概してそれはバーボン樽系の、さして熟成してない、若い年数のやつに多い。

このプルトニーは12年ながら、そんなピチピチした輝きがあるモルトです。
オフィシャルボトルが発売されたのはインバーハウス社(タイ・ビバレッジ社系)の傘下に入ってからで、現在は12年・15年・18年に加えてシングルカスクも出されています。
こうした改革を生むのは(良くも悪くも)外圧なのかも。
外圧頼みなのは日本に限った話じゃないんだね。

こちらの12年は蒸留所のハンドフィル限定品で、後々になって「あんとき買っておきゃ良かった」と地団駄踏んだやつです。
プルトニー、おおらかで良い蒸留所でした。

オールドプルトニー12年 蒸留所限定

クライヌリッシュ31年 1972-2004(Clynelish) 58.7%

  • 香り…いわく言い難し。貴腐ワイン、枝付きレーズン、ローリエ。
  • 味…酸味と甘味のバランス。老酒や養命酒、ウスターソース、ガラナエキス。とめどない余韻。
  • 総評…強烈。たいそう揺れるゆりかごのごとく幅広く懐深い。アブサンなどリキュール的な甘みも。

複雑! と参加者の声が上がったモルトがこちら。
たしかに、なんだかよくわからなけどすごい。
言葉にしようにも出せないやつで、困りました。

クライヌリッシュ31年 SMWS

まとめ

いやぁ、今回も楽しかったです。

ハイランドだのローランドだの区別は地元の人は言っておらず、もとはといえば支配階級が区分けしただけ、なんですよね。
業界のブランディング(そんな言葉すら空疎)以前に、今日のモルト隆盛は起源をたどればハイランド地方の反イングランド気質がもたらした一側面ともいえます。
対イングランド戦争の象徴たるカローデン・ムーアの戦い(1746年)の惨敗で、クラン(氏族制度)は解体、キルトやタータンチェックやバグパイプに加え、ゲール語の禁止と挙げ句ウイスキー製造への重税……もう締め付けだらけ。
そりゃ密造に走るってもんです。

産業革命の恩恵でローランドは大量生産は実現したものの、質的に劣ったことでウイスキー製造において焼け野原的になってしまいました。
いっぽうで質にこだわりコツコツ少量生産した結果、今日の大ブレイクにつながった北部のモルト。

でもハイランドモルトって、数多スペイサイドの名を成す蒸留所と比べると、特徴って「いわくいいがたし」なんですよね。
良く言えば「華やかでライト」といえますが、悪く言えば「無個性」なわけです。
アイラモルトのような、際立った個性やわかりやすさがない。

見方を変えれば、薄氷を踏むような、ビミョ~な違いこそがハイランドモルトの特徴とも言えませんかね。
繊細で、うっすらとした違いがあって、それでいて飲みやすい。
酒税の課税区分でカテゴライズされたものであっても、実際の個性の違いは如実と思います。

とはいえ、個人的にはそういう区分で色分けせず「好きなものは好き」と言っていきます。
実際好きなモルトって、地域なんか関係なくバラバラですし。

講師のウイスキープロフェッショナル・根本毅さんはじめ参加者の皆さん、今回もありがとうございました。
昨年のハイランドモルト第1回の模様はこちら ↓ です。

この記事を書いた人

hiroki

Webの中の人 / ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート / SMWS会員 / 訪問したBAR国内外合わせて200軒超 / 会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年) / ひとり歩き / 健全な酒活 / ブログは原則毎日更新1,000記事超(2020年1月現在)/ ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性