ハイランドモルトのグレンモーレンジィ(グレンモーレンジ)7種類を飲み比べさせていただきました。
10年と18年の水平飲み、10年・15年・18年、そして1977ヴィンテージ21年の垂直飲みです。
以下、ナンバー1〜3が10年、4が15年、5と6が18年、7がヴィンテージです。
講師の資料やコメントも参考に、自分の主観をメモしていきます。
※「1」は個別の写真を撮り忘れました
※OB=オフィシャルボトル
1.グレンモーレンジィ10年 OB 1990s bourbon barrel(GLENMORANGIE 10 YEARS OLD) 43%
- 香り…オレンジ、レモン、スポンジケーキ、水飴。
- 味…10年とは思えないリッチさ。後口はカカオで意外にドライ。
冒頭アイキャッチ写真右端。
特級表記がないので1980年代のものでなく、1990年代半ばごろ流通でしょうか。
輸入を株式会社野澤組が、販売を国分株式会社が手掛けていたものです。
1998年からグレンモーレンジィとアードベッグの最高蒸留・製造責任者を務めているビル・ラムズデン博士が、業界を志すきっかけとなったボトルが、この10年とか。
かつてグレンモーレンジィ蒸留所が製麦の過程でフロアモルティングを行っていたころの素材が混じってる……かも?
ということは製麦の精度が異なるので、出来に幅があり、それこそがシングルモルト元来の醍醐味だったわけですが。
今やコンピュータ管理で常に一定の品質を保てるのですから、これも時代の流れ。
2.グレンモーレンジィ10年 TEN OB 2000s bourbon barrel(GLENMORANGIE TEN YEARS OLD) 43%
- 香り…ややサルファリ。メープルシロップ、カステラ、カスタードプリン。
- 味…麦芽な甘みと蜂蜜が前面。カスタードプリン、後口は甘さとドライの中間。
現行のひとつ前、2004年以降に流通したヴーヴ・クリコ・ジャパン表記のボトルです。
10年から「TEN」に表記が変更されています。
入口で瞬間的に金属的な臭気がしましたが、あとはモーレンジの華やかモードに。
3.グレンモーレンジィ10年 オリジナル OB 2007〜(GLENMORANGIE TEN) 40%
- 香り…レモンやオレンジピールからのオランジェット、バナナ、バニラ。
- 味…上記1と2と比較すると、軽く心地良い。ガムシロップ、ココナッツミルク、オレンジ水。
ピクトストーンのロゴをラベルにあしらい「オリジナル」と名前に付けられた、2007年以降今に至っている現行品です。
自前で樽を調達する「デザイナーカスク」によるバーボン樽仕込みの原酒が多く詰められたもの。
いちばんよく知るグレンモーレンジィですが、かつての流通品との違いが如実。
以前のボトルからは老練な刑事に詰められているような感じがして(?)……遡るほど滋味深さが分かります。
この新しい10年を「コンテンツが痩せちゃった」と評した人もいらっしゃるそうで。
経験者は語るというか評価厳しいですね、個人的には好きですけど。
4.グレンモーレンジィ15年 OB 2000s(GLENMORANGIE 15 YEARS OLD) 43%
- 香り…強い主張。ナッツ、生木っぽさ、アンモニアも隠れてる。
- 味…浅煎りコーヒー、多数のスパイスで炒ったくるみ。余韻は長い。
2007年のラインナップ変更で終売となったオフィシャルの15年です。
バーボン樽の原酒を、1年間アメリカンホワイトオークの新樽でフィニッシュさせたものだそう。
ブラインドされたら当てられないやつで、今回の中で最も強烈なやつでした。
なんと2週間前に開栓したばかりとか。
ですが、1周して再び口にすると落ち着きを取り戻したかのような感。
5.グレンモーレンジィ18年 OB 2000s(GLENMORANGIE 18 YEARS OLD) 43%
- 香り…ふんわりした心地よい甘さ、どら焼き、あんこ。
- 味…素朴な甘さ。どら焼きや糖蜜、後口は若干のスパイス。
1990年代からお目見えした18年で、こちらは現行より一世代前の2005年ごろのボトルだそうです。
個人的には今回のボトルで最もハートマークでした。
美味でリッチコンテンツ、それでいて押し付けがましくなく、バランスがたまらない。
6.グレンモーレンジィ18年 OB 2011〜(GLENMORANGIE 18 YEARS OLD) 43%
- 香り…弾けるトロピカルフルーツ。バナナ、レモンピール。
- 味…始終甘やかでスムーズ。後口は若干のスパイス。
2007年のラインナップ変更後にリリースされた、現行の18年です。
上記5との違いはデザイナーカスクを使用していることで、原酒よりも樽の性格が際立っていることにある模様。
個人的にこの最新18年がシングルモルトのベンチマークになっているのですが、こうして昔のと飲み比べてみると、現在のほうが手心が加わっていると感じます。
樽へのこだわりのような細部まで凝っている分、かつての素朴さや原酒本来の良さが相殺されたのでは? と。
良し悪しという意味ではなく、これが今の時流に合わせた作り方なんじゃないかな。
7.グレンモーレンジィ21年 1977-1998 OB(GLENMORANGIE VINTAGE) 43%
香り…ブドウや桃。メープルシロップたっぷりのパンケーキ。
味…果樹の甘さ前面。特にバナナ、後口はシナモンなどスパイス。
グレンモーレンジィのヴィンテージシリーズのひとつです。
初出は1963年で、以降1971、1972、1974、1975、1977、1979、1980が免税店向けやリミテッドとしてリリースされたそう。
このセミナー最後の最後に老舗の果物屋さんが押しかけてきたような心地よさで、番外にして本日のMVPです。
なんでもフロアモルティング時代のもの、だそうで。
ありがたすぎて実感がわきません。
水平飲みと垂直飲み
もともとワインの試飲からきた言葉で、ウイスキー愛好家の間でもおなじみな飲み比べ法です。
水平飲み:同じ蒸留所の同じ熟成年数のボトル(例:10年のリリース時期違い、樽違い、オフィシャルボトルとボトラーズボトル違いなど)
垂直飲み:同時期にリリースされた熟成年数の異なるボトル(2007年に出された10年、18年、25年など)
グレンモーレンジィの概要など
グレンモーレンジィはスコットランドのテインにある蒸留所で、「大いなる静寂の谷」の意味。
現在の所有はLVMHで、同社はアードベッグも抱えています。
毎年ユニークなリミテッドボトルを出すのも、いかにもなマーケティングですよね。
生産者のオフザケ、もとい遊び心と両立するなんて、けっこうじゃありませんか。
生産量は年間620万リットルで、これはアイラモルトのカリラ蒸溜所と同規模。
販売量はスコッチモルトでグレンリベット、グレンフィディック、マッカランに次ぐ世界第4位(スコットランドでは第1位)。
キリンと同じくらいの背の高さ(5.14m)が眩しいポットスチルの高いネックが、クリアな酒質を作るといわれています。
現在よりもずっと昔、1900年前後にはバーボンバレルを使って原酒を熟成していた草分け的存在。
1980年代から樽を自社で調達し、米ミズーリ州オザーク丘陵の樽材を用いて、樽にするまで2年の天日干しと4年の充填を行っていて「樽のパイオニア」としての地位を確立しています。
なんでも日本のミズナラ樽は相性が良くなかったとか(?)。
他社へ原酒供給していない、オフィシャル以外のものが出回っていないのも特徴。
古代品種や酵母を使ったりと革新的で実験的な試みを行っている同蒸留所は、2021年に第2蒸留所(ライトハウス=灯台)が完成予定というから、ますます楽しみです。
主宰で講師のウイスキープロフェッショナル・根本毅さんはじめ参加者の皆さん、今回もありがとうございました。
皆さんの経験豊富さと博識ぶり、恐れおののくわ。
ワシも精進しなくちゃのう(笑)。