ウイスキー文化研究所のバーボン基礎講座に参加してきました。今回はテイスティングのラストにスペシャルな2種類をお出しします、と講師の土屋守代表から冒頭に予告が。そのスペシャルとは、初代大統領ジョージ・ワシントンが建設した蒸留所のライウイスキーでした。
1797年にワシントンによってヴァージニア州マウントヴァーノンに建てられたものの、1814年に焼失。それが復元されたのは今から10年ほど前の2007年。以来ウイスキー造りが行われているそうなのですが。驚くなかれ、なんと建設当初の製法を再現しているとか。
これがその2種類。さすがに希少なものだけあって、グラスでなくプラカップで配られました。右側がニューポット、左側が熟成させたもの。主原料のライ麦が60%。熟成物は辞書通りにスパイシーなイメージですが、ニューポットのほうは独特のクセのある甘さが立っていました。ぼくは熟成物のほうが美味しく感じたなぁ。
ボトルをチェックする土屋代表。見ての通りハーフボトルですが、価格は2万円(!)です。味や香りがどうのというより、歴史を感じる、歴史に思いを馳せるという感じでしょうか。貴重な機会をいただき感謝です。
前回はバーボンの製法についてかなり詳細なレクチャーでした。最終回となる今回はバーボンウイスキーの周辺の歴史を含めた話で、ウイスキーが絡んだ壮大な米国史を1時間強でおさらいしていく内容。
1492年のコロンブス西インド諸島到達に始まり、1775年の独立戦争、1794年のウイスキー戦争(ウイスキー・リベリオン)。1852年の黒船来航で、当時ペリーは13代将軍・家定にウイスキー1樽を献上しているという話が。そのウイスキーとは年代的にブレンデッドではなく、「シングルモルト」ではないか。文献が残っているそうですから、きちんと調べればそのスペックが分かるかもしれないですよね。
日本史が直接ウイスキーとは関係なくとも、この辺のルーツを知っておくと味わい方が違ってきます。何より楽しいですよね。
テイスティングアイテムは5種類。
カンザス クリーン ディスティルド
写真左上の無色透明のやつです。ウォッカ同様に製造されたスピリッツに、バーボンを加えたという「スピリッツウイスキー」です。ウイスキーとボトルにも書かれていますが、そういうカテゴリは従来ありませんから厳密にいえばウイスキーではないんですよね。
トップノートは瞬間タールのような臭気とアルコールっぽさ、すぐさま甘い香りが押し寄せるという面白さ。味はめちゃ甘のバニラで、クリームのような柔らかさがありました。
ジムビーム ライ
「ライウイスキーの入門編として最適」と土屋代表。ジムビームはマッシュビル非公表ですが、「ライ麦60%、トウモロコシ30%、残り10%が大麦ではないか」と土屋さんは推測されていました。
香りはマラスキーノチェリーのような甘さとスパイス。味は意外に甘くソフトでした。やや油っぽい印象です。
コーヴァル フォーグレイン
2008年にシカゴで初めて建てられた蒸留所で、全米のクラフト蒸留所で最大規模だそう。「フォーグレイン」とはオーツ麦、大麦、ライ、小麦の4種をミックスしたことから。オーガニックウイスキーというのも大きな特徴。ウイスキーでオーガニックを名乗るのは非常に難しく、特に樽が最大の難点だそう。それが「オーガニックである」と証明のしようがないから、とか。樹齢を推定できるように、樽のトレーサビリティーは科学的に実証できないんでしょうか。
香りはベタっとしていてマーマレードジャムのよう。味はチョコレートやら杏やら。ボディは強めでした。
バルコネス ベイビーブルー
コーンウイスキーです。バーボンで一般的な原料のデントコーンを使用せず、古代品種のブルーコーンを使ったというアメリカンウイスキー。それを知ったところでテイスティングには影響しませんでしたが。
香りは甘いシロップのよう。味は砂糖入り麦茶。
ジャックダニエル 蒸留所創業150周年アニバーサリー
バーボン講座のトリを飾る目玉。トーストを長く施したオークの新樽に、100プルーフ(50%)で樽詰め、倉庫の最上部で熟成。要するに、スタンダードバーボンの造り方を逆にした製法でリリースしたものだそう。
香りは土っぽさ、強いバニラ。リッチでまろやかな味。まさにジャックダニエルの至高といえるものでした。これが一番でしたね。
いやぁバーボンも奥が深いです。スコッチとの双璧といえる世界、深みにはまってみたいような、みたくないような。