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【ネタバレ】映画『バックルームズ』:あの黄色い部屋の正体

『バックルームズ』鑑賞

イケイケの映画会社A24が放つSFホラー『バックルームズ』(2026年アメリカ / Backrooms)鑑賞。
ケイン・パーソンズ監督は2005年生まれ、弱冠20歳で北米興収初登場1位獲得を成し遂げた俊英です。
とんでもない才能がまたひとり登場しました。

いやはや、ほんとにこの映画は怖かった。『シラート』同様、本編中早く終わってくれ勘弁してくれと席を幾度立ちたくなったか。
でも後半から意味がわからなくなり、劇場を出るときに「これは概念の話なのか」と考え込んでしまったほど。

というわけで『サンキュー、チャック』を解読した有識者に、本作の鑑賞と読解を頼みました。
以下ネタバレで簡単に読解を紹介します。

『バックルームズ』あらすじ

1990年、家具店を経営するクラーク(キウェテル・イジョフォー)は妻と別れた後、セラピストのメアリー(レナーテ・レインスヴェ)のカウンセリングを定期的に受けていた。
節電しているにもかかわらず店舗の電気代が高額なことを不審に感じたクラークは電気業者に調査を依頼し、地下室のブレーカーに接続先不明のスイッチを発見する。

店に寝泊まりするクラークは、突然テレビの電源が落ちたことで地下室のブレーカーをチェックした際、壁から漏れる光に気づく。
意を決して光の中に入ってみると、そこには黄色い壁紙と蛍光灯に照らされた空間が広がっていた。
実態不明、存在しないはずの部屋や廊下が無数にあり、クラークはそこで数々の現象に遭遇。
クラークはふたりの従業員の助けを借りながら、この空間と迷路の正体を探り当てようとする。

姿を現さなくなったクラークが気になったメアリーは店舗を訪ね、彼女もまたこの空間に迷い込む。

「記憶」と「フィラデルフィア実験」

ネット上の都市伝説に着想を得たケイン・パーソンズ監督が、それを映像化したという本作。

後半、空間に入ってきたメアリーを気絶させ、ダイニングのような一室に拘束したクラークは身勝手な主張(妻と別れた原因を他責し自己正当化)を繰り返しながら「ここは落ち着く、受け入れてもらっている気がする」と告げます。
この不気味な空間から現実に戻りたくない、というわけです。

メアリーを解放することにしたクラークの前に、家具店開業時のCMでクラーク自らコスプレしたフック船長の巨大版が現れます。
このフック船長はクラークを抱擁したかと思いきや、彼の首を噛み切るという所業に出た挙げ句、店外に脱出をはかるメアリーを執拗に追いかけるのです。

以下、有識者の見解を。

バックルームズの正体はクラークの記憶の集積です。

たとえば睡眠時に夢を見る人はわかるはずですが、夢の中の登場人物の時系列やシチュエーションはたいていめちゃくちゃで、どれも微妙に実体・体験と異なることがありません?

ダイニングには他に人形のような異形が3人佇んでいて、これらはいずれも容貌の組み立てがめちゃくちゃで、なかには食べられる身体を持つ者もいる。
人間の体を成していないこれらは現実の人生体験から年を重ねるほどボケていく、記憶が曖昧になっていくことを表している。
コピー機でコピーを繰り返すうち、対象物がピンボケになっていくように。

本作に登場する巨大版フック船長は、自分が好き好んでコスプレしたわけでないクラークの化身です。
だから「受け入れられている」などと言うクラークを殺してしまう。
本来やりたくない役目を人生でさせられた結果、自分に復讐されてしまった。

空間を探りにきたメアリーをフック船長が追い回すのも、クラークの夢に入り込んできた「異物」を除去するため。
クラークの探索を助けた従業員ふたりも異物として亡き者にされたわけです。

壁の外から壁の内側へ、現実から非現実への移動は「フィラデルフィア実験」を参照にしているのでは?

なぜ怖いのか?

以上が有識者による本作の(仮説)読解です。

個人的にはクリーム色の室内と、入り込むたびに置き去りにされた家具た迷路はおろか、室内の構造も微妙に異なることの不気味さにやられました。
「ブーン」「ビー」という神経に障るハム音で、緊張と不快がいっそう掻き立てられます。

なにより窓が一切ない密閉空間の脱出不可能感、クラークやメアリーが探索する迷路の先に何が待ち構えているかわからない未知の不安。
あんなところにいたら簡単に精神崩壊できる自信があります。

見てはいけないもの、触れてはいけない記憶、そういう禁忌を覗き続ける代償は自分で払わねばならない。
自分が嫌だと思うものに抗いつつ、楽しいことに正直に生きたほうが人生はいい。
そんな示唆に富んだ異色ホラーでした。

2026年9月10日 新宿バルト9シアター6

この記事を書いた人

hiroki「酒と共感の日々」

hiroki

Webの中の人|ウイスキー文化研究所(JWRC)認定ウイスキーエキスパート|毎日健全な酒活・週5でBAR飲み|会員制ドリンクアプリ「HIDEOUT CLUB」でBAR訪問記連載(2018年)|ひとり歩き|ブログは不定期更新2,700記事超(2026年5月現在)|ストレングスファインダーTOP5:共感性・原点思考・慎重さ・調和性・公平性