例によって、見比べならぬ、飲み比べです。しかも対象はグレンフィディック。王道を行く蒸溜所の実験的試み「エクスペリメンタル」シリーズの2種、試してみました。
グレンフィディック プロジェクトXX(ダブルエックス)エクスペリメンタルシリーズ
- 香り…穏やかながら立っている。青リンゴ、干しあんず。後半にカスタードプリン、アーモンド。
- 味…柔らか。ミルクチョコレート。ドライアプリコット。辣油的な唐辛子漬けのオイル。余韻は長め。
- 総評…割合とは裏腹にシェリー樽の特徴が表れている。他のスペイサイド、グレンファークラスや姉妹のバルヴェニーと並行してみるのも一興。
「エクスペリメンタル」シリーズの第2弾。グレンフィディック蒸留所へ招かれた20人のモルトマスター(=マスターブレンダー)がセレクトした20樽を、ウィリアム・グラント&サンズ社の6代目モルトマスター、ブライアン・キンズマンさんがヴァッティングしたんだとか。
バーボン樽、シェリー樽、ポート樽の原酒が使用されてるそうです。比率ではシェリー樽が多数を占めているとみましたが、果たして……?
グレンフィディック IPA エクスペリメンタルシリーズ
- 香り…爽やか。非常に良い。ヨーグルト。グリコスカイ。
- 味…ミドルボディ。サングリア。後口はスパイシーかつ薬味っぽさも。余韻は長め。
- 総評…酵母の感触が随所に。それでいて、ウイスキーらしさもあり、とんがったチャートに。クラフトビールのお供に。
@カドヤ黒門町スタンド
「エクスペリメンタル」シリーズの第1弾がこちら。IPA(インディアン・ペール・エール)樽で後熟したもの。要は「ビール樽」ってのがキモです。
この「IPA」というリミテッドに、僕は今までにない新鮮な感覚を得ました。なんというか、ウイスキー×地ビールが抜群のバランスで調和したウイスキーなのです。
ベースはバーボン樽なので、自分好みなのは間違いない。それ以上に、そこはかとなく酸味と朗らかさを感じたのです。ビールがルーツと分かる、それです。
この2種、僕としては「IPA」に軍配を上げます。ぜひビール党にも楽しんでほしい逸品です。
それにしても。グレンフィディック、ふだんはスタンダードさえなかなか飲まないのですが、やっぱり侮れません。
老舗でシングルモルト売上ナンバーワンを誇った栄光に胡坐をかかず、しれっとこういう企画商品、リミテッドを出してくるあたりが本領ですね。家族経営ならではの小回りの良さ(ここまで大きくなると適当な言い方でないかも)、かえって硬直化しない発想の柔軟性があるのかもしれません。